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概要

概要

文部科学省の特別経費新規事業に「持続的資源系人材育成プログラム」が採択されました。

本事業では、我が国の資源戦略に貢献できる人材を育成するために、九州大学、北海道大学の資源工学系教育研究部門が連携し、平成29年度より新たに共同教育課程「共同資源工学専攻」が創設されました。資源工学分野における大学間の共同教育課程の創設に向けた事業は、国内では初めてのものとなります。

共同資源工学専攻は、資源に関する専門知識に加え、「俯瞰力」「マネージメント・デザイン力」「国際性」を備えた人材を育成するため、特色あるカリキュラムを通した教育を英語で行っています。

背景・目的

鉱物資源を取り巻く世界の情勢は21世紀に入ってから急激に変化し、自国の鉱物資源を政治・経済問題の切り札として利用する資源ナショナリズムが台頭してきています。我が国が安定して資源を確保していくためには、将来の資源戦略を担う高度な知識と国際性を兼ね備えたエキスパートを育成する必要があります。

専門家の育成に携わる大学や大学院は、このような社会の要請に迅速に応える必要がありますが、総合的な資源工学の教育プログラムを持つ大学・大学院は国内に数校しかなく、現状のままでは十分な対応が難しい状況です。具体的には(1)資源系人材の育成に携わる教職員が不足しているので単独校ではカバーできない学問領域が存在し、(2)エンジニアリング教育に比較してマネジメント教育が手薄です。また、我が国の資源の研究・教育の全体を見渡すと、(3)各校が持つ研究・教育のリソース(教育プログラムや施設・設備)の運用が非効率であるという問題もあります。

これらの問題を解決するひとつの方法として、資源工学の教育に携わる複数の大学が連携して人材の育成に当たることが考えられます。

九州大学と北海道大学の資源教育・研究部門(九州大学大学院工学研究院・地球資源システム工学部門、北海道大学大学院工学研究院・環境循環システム部門)は、これまでにも個別のプロジェクトやイベントに関して協力と連携を進めてきました。本事業では、両者の連携をより有機的かつ本格的なものとするために、大学院共同教育課程(修士課程)を創設しました。

内容

本事業が目指す大学院共同教育課程は、単に両校の既存のカリキュラムを合体させたものではなく、21世紀の資源系人材の育成にふさわしい新しい教育プログラムです。具体的には、各校が個別に育成してきた人材に比べて(1)国際性、(2)資源の流れを俯瞰できる能力、(3)デザイン・マネジメント能力の3 点でより優れた人材を養成することを目指します。

また、JICA が推進する「資源の絆プログラム」と連動して(4)日本の資源系人材と資源国からの留学生の絆を強くすることも重要な課題です。これら4項目に対応して、共同教育課程では国際性を高める「国際フィールド調査」、俯瞰力を高める「大学院エクスチェンジセミナー」、デザイン・マネジメント能力を高める「資源マネジメント特別セミナー」、日本と資源国の絆を強くする「国際人材交流ディベート」を柱とした教育プログラムを実施することを計画しています。

意義・効果

(1)日本と資源国の双方における社会的意義
本事業は、資源国から戦略的に招聘した留学生と日本人学生が共に学ぶことを大きな特徴としています。この教育プログラムは日本と資源国の間の人的ネットワークを強化し、日本の将来の資源確保に寄与します。また、本事業では、長年にわたって日本が培ってきた環境保全・修復技術を組み込んだ資源開発の方法を資源国の留学生に教育するため、将来的には資源国の環境破壊防止にも寄与することが期待できます。このことから、本事業は日本と資源国の双方にとって社会的意義が大きいと考えます。

(2)大学間連携による教育改善の効果
九州大学と北海道大学の2校は特色の異なった教育プログラムを持っているため、両校が連携して教育リソースを共有することで、単独校では実現できなかった高度なレベルの資源系人材の育成が可能になります。さらに、日本の資源教育において今後の開発が不可欠な資源マネジメント教育に関しても、各校が独自に持っている社会人や海外教員へのコネクションを共有して利用することで、単独校では困難な、充実した教育を実現することができます。

今後の展開

日本には資源教育プログラムを持つ大学が数校しかありません。このうち九州大学と北海道大学は、特色の異なる教育プログラムを持っていますが、充実した国際教育の実績や「JICA資源の絆プログラム」における役割(主に資源国の大学教員の教育)は共通しています。したがって、両校の連携の障害は少なく、社会が求める高度な資源教育プログラムを迅速に実現することができます。そして、日本人学生と資源国の留学生が共に学ぶ過程で形成されたコネクションを最大限に活用することにより、世界の資源国との「切れない絆」を構築することを目指します。